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第1話 わたし
わたしは泣くだろうか?
この世界から、あの人たちの存在が消えてなくなったら。
病院へ、行きたくもない面会に行くわたしは偽善者だと思う。
ただ、「娘」という役割に与えられた義務を果たしに行くだけ。
行かなくて済むのなら、行きたくもないとさえ思っている。
病院のベッドに横たわる父に、母に、何の憐憫すら浮かばない。
黙っているのは、悲しみでかける言葉が浮かばないからじゃない。
言葉をかけたいとも思っていないから。
自分たちはさんざん、わたしを追い詰めて、わたしを狂わせたというのに、愛情を持った目で見てもらえると思っていたとしたら吐き気すらしてしまう。
冷たいと言われても、これがわたし。
これから、目の前で消えようとしている命を前に思う。
もし、涙を流すことがあったとしたら、それは悲しみからなのか、それとも安堵からくるものなのか……
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