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逃れられない愛
執着✕インテリ
もうすぐあいつが帰ってくる。スマホで位置情報を確認しながらどんどんと近づいてくるその影をおもわず指でなぞりそうになるのを拳を握って我慢した。
自分で会社を起こしてその知的を生かした仕事を毎日遅くまで頑張っていることは知っている。その裏でここまでのしあがってくるのに色々な人間関係を築いてきたのも知っている。
俺以外の誰かに媚売ってきたのだってお見通しだ。
それについて今さらどうこう言うつもりはない。
ただ、今は俺だけだって――俺だけのお前だっていう確かなものが欲しくて堪らない。
人にこれほど依存したことなんてあっただろうか? いや、きっとどれだけ考えても一度だってなかったはずだ。
それなのに――俺をこんなに執着させるなんて、お前は本当にすごいやつだと思う。
「一分でも、一秒でも早く帰ってこい……」
早くこの腕の中に抱き締めたいと体が疼き出す。
ほらっ、あと少し――。
――ガチャッ――
玄関のドアが開き、あいつが帰ってきたことがわかれば、玄関先へと焦る気持ちを抑えながらゆっくりと向かう。
「ただいま」
「ああ、おかえり」
「遅くなってごめん……」
「別に。仕事なんだろ?」
「それ以外に何があるっての?」
「さあ……何かあるの?」
突っかかった言い方になるのは、早く抱き締めたい衝動を抑えているから――。
疲れているとわかっているから、すぐには抱き締めたり出来ない。だけど、それも時間の問題だ。
「悪い、疲れてるんだ……」
「わかってるよ。でも、おかえりのキスくらいできるだろ?」
「だったら……ほらっ」
ちょっと強引に引き寄せられ、唇が重なる。
こんなキスされたら、止まらなくなるって思わない?
「疲れてんじゃないのかよ?」
「疲れてるよ。でも、お前が俺を抱きたいって顔してるから……」
「うるせぇ……」
「大丈夫だよ、俺にはお前だけだから……」
「その保証は?」
「今からたっぷり抱かせてやる」
どうやったってお前には敵わない。
だってお前には俺の心がお見通しってことだろ?
どれだけ疲れていたとしても、こうやって腕を広げて俺を受け入れてくれる。
そして、俺の上で声が枯れるまで啼いてくれる。
月明かりに照らされたその美しさにまた、俺は心を奪われて離したくないと最奥へと突き上げる。
もっと、もっと……とお前の全てを欲しいと願う。
きっともう離してやれない。
だから覚悟して――俺の愛からは決して逃れられないと――。
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