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「まあ、わたくしとしては柊綾美に対してはそんな気持ちですけれど、野々村さんの恋の話も聞きたいですね」
これまで険しい顔をしていた萌桃が表情を緩めた。
「い、良いよ。そんなの恥ずかしいから!」
それに、わたしが恋する相手は今まさに話に出ていた萌桃の敵の綾美先輩なのだし。
「恥ずかしがらなくたって良いのに」
「やだよ! もうっ、さっきのは忘れて!」
「残念です」
萌桃がクスッと笑った。
「……でも、大丈夫なの? わたし、萌桃の怒ってる相手のこと好きになってるわけだけど」
「そんなこと気にしなくても良いですよ。わたくしの感情と野々村さんの感情はまた別物ですから。それとこれとは別で、一緒に全国を目指すお友達として、仲良くしてほしいです」
もちろん! とわたしは元気よく答えてから、続ける。
「そうだ、これから一緒に頑張るわけだし、わたしのことは苗字で呼ばずに下の名前で呼んでもらっていいよ」
「わかりました。では、改めてよろしくお願いしますね、小鈴さん」
「敬語もやめてもらって良いんだよ……?」
「わたくし、こっちの方が話しやすいので……」
萌桃が困ったように笑ったから、無理強いはしないでおいた。
「わかった。じゃあ、こちらこそ改めてよろしくね、萌桃!」
小柄なわたしたちは机越しに身を乗り出して握手をしたのだった。
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