迷子と一目惚れ

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迷子と一目惚れ

やると思ってたけれど、やっぱりか、と思ってわたしは自分の方向音痴具合に呆れてしまった。昨日、確かに入学式の前に学校までの経路は確認しておいたのだ。間違っても当日、わたしのお得意の迷子を発動させて、入学式に遅刻するなんてことがないように。それなのに、しっかりと迷子になってしまうあたり、さすがわたしだな、と自分に対して皮肉的な褒め方をしてあげたくなる。 「おかしいなぁ、わたし確かに昨日はこの道をきたと思ったんだけれど……」 似たような道が何本もあったから、きっと曲がる場所を間違えたに違いない。 「やっちゃったよぉ……」 わたしは綺麗な桜の木の下で立ち尽くしていた。 「入学式遅刻なんて、やだよぉ……」 一人だけ後から遅れて周囲の子や、親からチラ見されて気まずい空気の中自分の席に向かっていくところを想像すると、胃が痛くなってしまう。考えただけで、ストレスで目頭が熱くなってきてしまった。 小さく息をついて、込み上げてきた涙を拭う。高校生になったら泣かないようにしようと思っていたのに、入学早々泣いてしまうなんて、我ながら本当にメンタルが弱くて嫌になる。一人桜の木の下で瞳を拭って正しい道を探すのも放棄してしまっていた。 「もうやだよぉ」 わたしはその場でしゃがみ込んで、顔を覆う。一人寂しく俯いて、間に合わないことがほとんど確定してしまっている入学式に思いを馳せていると、突如頭上から声がした。
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