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「入ります!」
「え?」
「わたし、この部活に入ります!」
入部届を、急いでブレザーの内ポケットから取り出して、橘先輩に渡した。
「いやいやいや、突然すぎない? うちの部活どんなことしてるのか聞いたの?」
「弓道部ですよね?」
「キュウドウブには違いないけれど、それだけやる気満々ってことは、具体的な活動内容はまだ聞いてないよね?」
「聞いてないですけど……。弓道って弓道じゃないんですか……?」
わたしが恐る恐る尋ねたら、橘先輩が苦笑いをしながら答えてくれた。
「とりあえず、うちの部室がこんな狭いスペースで、着替える場所もないことからわかるように、弓は引かないよ」
「弓は引かない弓道……?」
「そう、弓は引かない弓道」
橘先輩が頷いたのと同時に、部室の扉が大きな音を立てて開いた。わたしは思わず入ってきた人物の姿に釘付けになってしまう。前にあった時と変わらない麗しい姿。
「ごめんなさい。遅れてしまったわ」
柊先輩がやってきたのだった。
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