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「嫌なのよね。全部説明してから逃げられてしまうの」
「今までもみんな逃げちゃいましたからね。まあ、あたしたちの活動聞いてやりたいって言う方が変ですけど」
橘先輩が諦めたように笑う。
「えっと……、ここの弓道部ってどんな活動をするんですか……?」
「まず、多分だけど、うちの部活の漢字間違ってるよね?」
わたしが恐る恐る尋ねたら、橘先輩が困ったように笑った。
「弓の道、ですよね……?」
わたしが答えると、柊先輩が静かに首を横に振った。
「泣くに道で、泣道よ」
「泣道……?」
わたしが困惑しながら反芻していると、橘先輩が突然、鼻を啜り出した。
「そう、紛らわしくてごめんね……」
「え……? そんな泣くほどのことじゃ……」
わたしが橘先輩を慰めていると、今度は柊先輩が両手で顔を覆って、ワッと大きな声を立てて泣きだした。
「ごめんなさい。誤解させてしまったわ! 間違えさせてしまった私たちが悪いの。だから、あなたは何も見なかったことにして、今すぐ帰ってもいいわ」
「え、えぇっ!? 2人とも泣き出さないでくださいよ……」
そんなことをされると、わたしまでつられて泣いてしまうではないか! 気付けば、わたしの瞳は潤んでいた。そして、ポタポタと涙が溢れる。高校生にもなって、ほとんど何も起きていない状況の中で3人で狭い部屋で泣くなんて少し異常だった。それでも、わたしの涙は止まらない。きっと2人もすぐには涙は止まらないのだろうと思ったのに、いつの間にか2人とも、呆れたようにわたしの顔を見ていた。
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