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「わ、わたし、やっぱり泣道部に入部します!」
「え、ちょっと、あなたはさっき入部しない感じになってなかった!?」
橘先輩が驚いていたけれど、わたしは首を振って、それを認めなかった。
「いえ、さっきは橘先輩に連れて行かれるがままに移動していただけで、やめたかったわけではありません! わたし、泣くの得意なので、せっかくの青春、泣道にチャレンジしてみたいんです! それに――」
わたしも柊先輩に興味があります、ぜひお近づきになりたいです! と言おうとしたのに、橘先輩はまた萌桃の方に向き直る。
「ていうか、あなた、さっきあやみん先輩目当てって言ってたけれど、そんな不純な入部動機、良くないからね!」
橘先輩的には柊先輩目当てで入ることはあまり良くないみたいだ。どうやら、わたしはすんでのところで橘先輩に怒られずに済んだらしい。
「どういう動機で入るかは人それぞれだと思いますけど?」
萌桃は呆れたように言う。
「この子の真面目な動機を聞いた後で、そんな不純な動機は気になるから」
橘先輩はわたしを見たけれど、わたしも実は不純な動機だから、あまり人のことは言えなかった。なんだか不穏な空気が流れていたところに、柊先輩が少し腰を屈めて、萌桃に視線を合わせながら尋ねた。
「あなた泣道自体は真剣にやるつもりあるのかしら?」
「あります!」
「泣道の経験もあるのかしら?」
「ありますよ!」
柊先輩はその2つの質問をしてから、彼女の瞳をジッと覗き込んでいた。近距離で柊先輩に見つめてもらえるなんて、羨ましい。ここは恋敵の萌桃にリードを許してしまっている。
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