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「美桜園学院の子よね?」
「え、あ、はい……」
わたしは慌てて涙を拭って、声の方を見上げた。
そこに立っていたのは、わたしと同じ学校の制服を着た、手足と髪の毛のスラリと長い女子生徒だった。彼女はわたしと目を合わせると、ニコリと微笑んでから、同じ視線になるためにしゃがんだのだった。
「どうしたの? 何か困ったことでもあったの?」
長いまつ毛の付いた瞳をパチパチと動かしながら、カバンから取り出したハンカチでわたしの瞳の周りを拭ってくれていた。ふんわりとした匂いがわたしの鼻先に触れて、くすぐったい気持ちになる。
見知らぬ子にハンカチを当てさせるのが申し訳なくて、「大丈夫です」と拒んだのに、彼女は「まだ使ってなくて清潔だから、気にしないで」とニコリと微笑んできた。
「さ、そんなことよりもあなたの悩みを聞かせて頂戴」
「悩みというか……」
わたしは小さくため息をついた。
「迷子になっちゃったものでして」
「迷子? 美桜園学園に辿り着けないってこと?」
「お察しの通りですね」
わたしは今度は大きくため息をついた。
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