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泣道
「えっと、とりあえずひと段落したし、みんな自己紹介しとく?」
橘先輩が提案する。わたしたちは、教室の机を三個ほど横に並べたらもうスペースの無くなりそうな、縦長の狭い部屋で話し始めた。机を一つだけ置いて、その周りに4人で集まって、話し始めた。
「じゃあ、私からね。3年A組柊綾美。一応泣道部の部長。小鈴ちゃんとは入学式の日にあったわね」
「はい、あのときは柊先輩に助けてもらったおかげで無事に入学式間に合ったんです」
「せっかく部活動なんだし、別に下の名前で呼んでもらっても構わないからね?」
柊先輩のことを綾美先輩と呼んで良いなんて、緊張してしまう。
「あ、綾美先輩って呼んでいいんですかぁ」
わたしはドキドキしながら名前を呼んでしまった。
「もちろんよ。これからは一緒に活動していくんだから」
綾美先輩が優しく微笑んでくれたから、わたしは蕩けそうになってしまっていた。
「自己紹介って名前だけでいいの? もっと好きな食べ物とか、好きな人とか言うようにしたらいいのに」
橘先輩が楽しそうに確認してから続ける。
「じゃ、次はあたし。あたしは2年E組の橘愛莉華。2人しかいない部活だったから、一応副部長やらされてるんだ。後輩できるの初めてだから、わからないことあったら全然頼ってね。あたしも愛莉華とか、アイリカとか、適当に呼んでもらっていいからね」
さっきは萌桃と少し気まずい感じになっていたけれど、今の愛莉華先輩はわたしと会って話をしていたときの優しい雰囲気のままだった。
「そのアイリカっていうの誰も呼ばないと思うから、言わなくて良いんじゃないかしら?」
「えー、結構気に入ってる名前なんだけどなぁ」
愛莉華先輩が残念そうに頬を膨らませてから、続けた。
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