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「なるほどね、新入生の子ね。任せて頂戴!」
彼女はもう一度ハンカチでわたしの涙を拭ってから、わたしの頭をポンポンと触ってから立ち上がり、こちらに手を差し伸べてきた。
「まだ入学式には全然間に合うわよ。早く行きましょう」
はい、と小さく頷いて、立ち上がる。小さなわたしよりも頭一つ分くらい背の高いスラリとした女子生徒と並んで歩く。優しく握ってくれている手のひらがとても温かくて、不安でいっぱいだった気持ちが安らいでくる。
わたしはチラリと先輩の横顔を見上げる。スッとよく通った綺麗な鼻筋、と強調された長いまつ毛がよく見える。わたしの心臓の鼓動が先程までよりもさらに早く動いているように感じられた。その原因が、迷子になった不安から来るものなのか、これから始まる学校生活に胸をときめかせているのか、それとももっと他の理由なのかはわからなかった。
ただ一つ言えることは、わたしはこの先輩の温かさにもっと触れていたいという感情が生まれてしまっていること。それからも何度も何度もわたしは先輩にバレないように横顔をチラチラと見つめていたのだった。
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