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わたしたちは、引き続き学校に向かって歩き続けていた。まだ先輩はわたしの手を引いたままだったから、少しずつわたしの手のひらは緊張で汗ばんできていて、恥ずかしかった。
「そういえば、自己紹介がまだだったわね」
歩きながら、彼女が話し出す。
「わたしはキュウドウ部部長、柊綾美よ」
柊綾美先輩、素敵な名前だ。しっかりと名前を覚えておかなければ。それに弓道部の部長をしているなんて、かなり見た目通りだと思ってしまう。あとは生徒会長でもしていそうな、真面目で清楚な雰囲気だった。そんなことを思いながら、わたしも自己紹介をしておく。
「わたしは野々原小鈴と言います」
「小鈴ちゃんね。可愛らしい名前。よろしくね」
柊先輩はわたしの方を見て、微笑みながら返事をしてくれた。その表情がとても綺麗で、また心臓の鼓動が早まってしまった。なんだか不思議なフィルターでもかかったみたいに柊先輩のことがキラキラして見えてしまっていた。
ツカツカと姿勢よく歩いていく柊先輩に引っ張られていき、わたしはひたすら学校に向かわされた。少し前を歩く柊先輩の靡かせる長い黒髪に思わず見惚れてしまう。わたしはこの人と一緒に高校生活を過ごしたい、そう思わされてしまう。なんとか接点を作ろうと思い、わたしは尋ねた。
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