迷子と一目惚れ

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「さっき、キュウドウに興味があるって言ってたね。あなたは素質はあると思う。けれど、キュウドウが何かをきっとわかってないから、安易には入部は薦められないわ。きっと勘違いをしているから」 「弓道って弓を引いて的を狙うスポーツですよね」 「違うわ」 柊先輩が即答したのを聞いてから、たしかにこの答え方は良くないかもと思った。まるで弓道を舐めているように感じられてしまうかも。 「あ、違うんです。心をきちんと研ぎ澄ませて、精神集中の果てにあるものが弓道で……」 「違う方向から近づいていっているけれど、でも根本的に間違ってるわね」 「根本的……」 わたしは答えを見つけ出すために、先輩の言葉を小さな声で復唱した。 「たしかに、キュウドウは心をきちんと研ぎ澄ませて、精神集中の果てにあると言っても過言ではないわね。きゅうどうはとっても奥深いから」 「先輩、根本的っていうのは、どういう……」 わたしが尋ねたのと、柊先輩が時計をチラリと見たのはほとんど同時だった。
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