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「もうちょっと急がないと入学式に間に合わなくなっちゃうわね」
柊先輩がわたしの顔にハンカチを当てる手を止めて、また手を握る。
「さ、急ぎましょう」
「え、あ、はい!」
入学式に遅刻したらまずいから、ここは柊先輩の言う通り急ぐことにするけれど、柊先輩の言いたい弓道についてまだわからないことも多々ある。というか、わたしの認識している弓道と、柊先輩の認識している弓道が別物なのではないのだろうかとさえ思えてしまう。入学式よりも、もはや弓道の認識の差異について気になってしまっていた。そんな風に思った時にまた別の疑問が湧いてくる。
「ところで、今日は入学式ですけど、部活動か何かで学校に行くんですか?」
「部活動もあるけれど、そんな早い時間からじゃないわよ」
「じゃあ何しに行くんですか?」
「生徒会長だと今日はどうしても忙しくなっちゃうのよ」
「なるほど」とわたしは頷いた。
生徒会長と言われてスムーズに納得してしまった。むしろ、不思議なくらいしっかりとした麗しいオーラの理由がわかって安心してしまった。
「驚かないのね」
「見た目通りすぎて」
ふうん、と柊先輩が言った。桜をバックに髪をサラッと靡かせたその姿もやっぱり麗しかった。
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