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翌日の夕方、ルシアンはいつものようにアマリリスの屋敷を訪れてきた。
「アマリリス、好きだよ」
今日は色とりどりのパンジーの入った可愛らしい花束だった。
「ありがとうございます」
しかしいつものように素直には喜べなかった。
「アマリリス?どうかした?なんだか元気がないね」
「……昨日、フォンティーナ様にお会いしたんです」
「フォンティーナに?」
「ええ。同じ公爵家の温室お披露目パーティーに出席されてたんです。……殿下が、お贈りになった殿下の瞳と同じ色の宝石がついた首飾りを、それはそれは嬉しそうにつけてらっしゃいました」
「そ、それは誤解だ」
「誤解?」
「別れた時の条件だったんだ。最後にフォンティーナの欲しいものをプレゼントすると。
彼女の希望が大きなサファイアのついた豪華な首飾りだったんだけど、サイズの大きい宝石を探したり豪華な首飾りを作るのに時間がかかってしまって、完成したのが最近だったんだ」
「本当にそれだけですか?」
「え?」
「自分の瞳の色の宝石を贈るなんて、別れた相手に贈るにしては思わせぶりなものですよね」
「……なにか他意があるとでも?」
「い、いえ。ただフォンティーナ様は例え過去であっても殿下の『真実の愛』のお相手。簡単に忘れることなどできなかったのではありませんか?」
「っ君は…毎日僕の気持ちを聞いているのに、全然信用してなかったんだな。とても残念だ」
「あっ」
悲しそうな顔をしたルシアンはそのまま帰ってしまった。
ルシアンが帰った後、冷静になったアマリリスは自分の発言をひどく後悔した。
(どうして、あんな疑うようなこと言ってしまったんだろう)
ルシアンはとても悲しそうな顔をしていた。
毎日好意を伝えている相手にあんな風に疑われたら、アマリリスだってとても悲しく思うだろう。
ルシアンを信じきれずに傷つけてしまった。
早く謝りたい。謝って、自分の素直な気持ちを伝えたい。
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