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 そのとき、理解をした。  たぶん私は、いずみのことを親友だとは思っていないし、今までもそう考えたことはなかった。同級生で家が近くて、気の合う女の子というだけだったのだ。  性格も違う、好きなもの、趣味や嗜好、考え方や言葉遣い、なにもかもが違っている。じゃあどうして親友だなんて思っていたのか。それはやっぱり、周りがそう決めたからだろう。百々花といずみは気が合う。親友みたいだと。  でも本当はそうじゃない。仕方がなかったのだ。いずみが側にいれば、私は引き立つ。地味な彼女は脇役、明るい私は主役。そう思いながら、これまで過ごしてきた。  対等なんかじゃない。私といずみは立場が違うから。  母が家を出て行った理由もそうだ。あの人は主役でいたかったのだ。父が私にする愛情の深さを母は感じて、嫌気が差した訳だ。大学を卒業したら、もう責任はないと言ってなんの躊躇もなく家を出て行った母親。  彼女にとって、私は娘でありながら女としてのライバルだったのかもしれない。  似ていると思った。母にとっての私と、私にとってのいずみは、同じ。  好きな男性のためなら、平気で相手を見捨てて、裏切るような性格なのだ。それが娘であろうと、親友であろうと。  私が主役だと思っていたのに。どこで踏み外したのか。 「あともうひとつ」そう言って、いずみは両親への手紙を畳んだあとに話し始める。 「両親への感謝とともに、もう一人、私には感謝を伝えたい人がいます。それは、私にとって誰よりも大切な存在、衛藤百々花さんです。百々花、前へ」  席に座っていた私は、スタッフに促されるように高砂(たかさご)へと歩かされる。そして、新婦であるいずみの前へ。 「百々花。私は、誰よりもあなたに、感謝を伝えたい。私にとって、一番の親友だから。あなたがいてくれたから、今の自分がある。本当に今までありがとう。そして、これからもよろしくね」  彼女は私に抱きついた。大きな拍手が会場を包み込み、皆は感動に浸っていた。ここにいる二人を除いては。
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