社会人時代

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 このままでいいの? このまま本当に、ジャカルタへ行ってもいいの?  潤平からもらった指輪を触りながら、私は何度も何度も自問自答を繰り返した。それこそ、頭を悩ませ過ぎて熱が出てくるほど。  悩みに悩んで、私はひとつの答えを出した。 「……本当に、それでいいのか?」  潤平はか細い声でそう尋ねる。 「……ごめんなさい」  私は涙を流しながら謝った。  これでよかったんだ。私は、自分の人生を生きている。友人は誰一人として賛同してはくれなかった。 「絶対やめた方がいい」そう言って、私の気持ちを猛反対した。  それでも、私はこの選択をした。  潤平に思いを伝えたその日、SNSに自分の気持ちを素直に記した。 『運命は意外と近いところにあるのかも』  あの広告の言葉だ。  それを誠志郎が見てくれているとは限らないけど、自分の中で区切りをつけたかった。私は、決断をしたのだ。  潤平とは別れた。私にはもっと大事な人がいるはずと考えて。誠志郎が私の思いに応えてくれるという算段があった訳じゃないが、自分の気持ちに嘘をついてまで結婚をしたくはない。  この先、なにがあっても後悔はしない。そう心に決めたのだから。  そんな私の決意は、神さまがちゃんと見ていてくれたらしい。  誠志郎から連絡があったのは、それからすぐのことだった。  私の運命の人は、ずっと近くにいたんだ。随分と遠回りをしてしまったけど、彼と一緒になることはもう前から決まっていたらしい。  私は会いに行く。運命の人の元へ。
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