ふたりだけの生活

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それから二人ゆっくりと朝食をとって、祈織はひとりで買い物へと出かけた。 一眞はこじらせた足の捻挫がまだよくなってはいない。一緒に行きたいとねだる一眞を宥めて、祈織は軽自動車を走らせ昨日立ち寄った大型のショッピングモールへと向かった。 昨日は取り急ぎ必要なものを最低限だけ揃えただけだ。 ここは比較的暖かい気候だが、古い家ということもあり朝晩だいぶ冷え込む。石油ストーブの為の灯油も必要だし、少し厚手の上着もいる。 両親が大阪へと行ってひとり暮らしを始めてまだ半年も経っていないが、都会での暮らしでも大変なのだ。 この町は坂も多いし、祖母の家は山の中腹近くにある。買い物だって一苦労で、あの部屋で祖母はそれをひとりで何年もやっていたのだ。 その祖母のところへも家を借りると言う話をしに行かなくてはならない。 祈織は大方の買い物を終えると電源を落としていたスマートフォンを取り出した。電源を入れれば何件もの着信とメール、メッセージが入っていた。安達をはじめ、倫太朗やバイト仲間、そして瑞希の名前もあった。 メッセージが何件かと着信一件。 瑞希はどんな思いで祈織に電話をかけたのだろう? 誰かが祈織と一眞がいなくなったと伝えたのだろうか? 祈織は心が揺さぶられることを危惧してメッセージを開くのをやめた。 そしてそれらを見ながらそのメッセージや着信の欄に鷹司の名前がないことに気付いた。 それに祈織はじっとその画面を見つめる。 とりあえずバイト先へしばらく休むこと、安達へしばらくしたら帰る旨メッセージを入れることに決めて、その前にととある番号を呼び出した。 三コール後、機械音が聞こえて相手が電話を取ったことが知れた。 『そろそろ連絡が来るころじゃないかと思っていたよ』 何もかもお見通しといったような相手は落ち着いた声で電話に出た。 「鷹司さん……」 祈織は一瞬言葉に詰まり、ごくりと喉を鳴らす。 『お前にしては思い切ったな』 「……そうですか?」 祈織は鷹司の面白そうな声に問い返した。 『……自分ではそんな事ないと?』 「……いえ、そうですね。昔から突然大胆な事をすると両親や兄にはよく言われていました」 『ああ、そういえばそうだった。そんなこともあったな』 祈織の言葉に電話口で鷹司は明るく笑った。 「でも、今回の件は本当に急に思い立ったので……自分でもいっぱいいっぱいだった事に今更ながら気づきました」 取るものも取らず、本当に攫うように一眞を連れてきた。
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