記憶とこれから

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来客を知らせる音が鳴ったためドアホンを見れば瑞希が立っていた。一眞は玄関へ向かってドアを開ける。 「よう、体調どうだよ」 「うん、全然平気」 「ならよかった。面接、明日だろ」 「うん」 部屋に入りながら聞いてくる瑞希に答えながら意外と普通に話せるものだと一眞は小さく苦笑いした。 着の身着のまま東京に帰ってきた一眞の家のドアを開けてくれたのは瑞希だ。その時置いていってくれた瑞希に渡した一眞の部屋の鍵をもう一度瑞希に差し出した。 何もついていなかったそれはいつの間にか有名なキャラクターのキーホルダーがついていた。 「忘れないうちに渡しとく。これ、ありがとな」 「もういいのかよ」 「うん、鍵とスマホ、祈織さんがバイク便で安達さんに送ってくれてたから……」 「……ふぅん」 瑞希はどこか納得のいかなそうな返事をしながらも一眞からその鍵を受け取った。 「なんか飲む?」 「テキトーに」 「まさかバイクで来たわけじゃないよな?」 「お前がうるせーからタクシー」 ふんと嫌そうな顔になりながらも先日の小言を受け入れたのに笑って一眞はビールを取り出した。 「つまみ、ポテチくらいしかないけど」 「いーんじゃねぇの」 そういったことにもこだわりのない瑞希はそう言いながら自分のバッグからDVDを取り出した。 「一緒に見ようかと思って」 「なに?」 珍しいとグラスを取り出しテレビの前のローテーブルに置きながら白地のDVDを見る。 「1月からの俺と祈織が出る回のドラマ、お前も見たいかなと思ってさ」 「え! 見たい! よく手に入れたな」 「祈織の演技見て自分に足りないとこ勉強したいんだって無理を承知で言ったら関本監督がくれた。あの人真剣にそういうの言えば聞いてくれるから」 「そうなんだ……」 「あ、お前今真剣に勉強する気あるのかって思ったろ」 「そんなこと思ってないけど!?」 「ほんとかよ」 面白そうに笑いながら一眞にそれを差し出す。そんなやり取りがいつもの感じで不思議な気さえする。 一眞はそれを受け取るとDVDプレーヤーに入れた。 瑞希は一眞が差し出したビールのプルトップを引いた。その隣に座ればグラスを出せと言わんばかりに缶を差し出す。 「サンキュー……瑞希も」 「おー」 お互いにグラスにビールを注いでこつんと縁を合わせる。一口飲んで一眞はリモコンを取り上げた。
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