炎の手

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「おしまい。オリビアはどんな魔法を使いたい?」 「ひとつにしないとダメ?」 「そうよ。ひとつだけ。欲張りさんは精霊たちに殺されちゃうの」 そう言われた私はたくさん考えた。王女として、どんな魔法が使えるようになれば、国民のためになるのだろうと。 「お母様はなにがいいと思う?」 他の国からお嫁さんとしてこの国にやっきたお母様に魔法は使えない。だから、私がこんなことをきいたのはバカにしているからとかじゃなくて、もしもの話が聞きたかった。 「お母様にはわからないわ。でも、どんな魔法でもオリビアが頑張ればきっと素敵な魔法になるわよ」 お母様に褒められたような気がして嬉しくなる。お母様はいつだって私の味方で、私の応援をしてくれる。それが嬉しくて仕方なかった。 今年で十歳になる私は誕生祭の日に魔法をお披露目しなければいけない。だから、それまでにどんな魔法を身に付けるのかを決めなければならないのだ。 この国は雪国でいつだって雪が降っている。太陽が出ている日を私たちはほとんど知らない。だから私は、暖かな魔法がほしかった。凍えるような身体を暖めてくれる。そんな魔法。 「それだったら、炎の魔法なんてどうかしら。炎の魔法はとっても強い精霊たちが操っているから、ポケットに詰め込めるかはわからないけど、頑張ればきっとできるわ」 私の想いが言葉になっていたのか、お母様がそう言ってくれる。 「そうね! さっそく明日、炎の精霊たちにお願いしてみる!」 優しく頭を撫でてお母様は応援してくれた。
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