炎の手

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 三年後。私は城を出て魔法で国を暖めていた。歳を重ねるごとに魔法の力は強大になっていって、全力を出せば太陽のような炎の塊を空に浮かべることができた。だが、その魔法を一度試したとき、とても体力を消耗するということを知ったのでそれ以来使っていない。道を塞ぐほどの雪や、屋根に降り積もった雪を溶かしたり、薪が買えない家に小さな精霊を飛ばして家を暖めてもらったりしていた。 いつか、この国の冬が終わるのかもしれない。 みんなそんな期待を抱いていた。私も、空まで届くような炎で雲を消し去ることができれば、太陽を拝むことができると思っていた。 ある日、私はいつものように城を出て、私は丘を登っていた。昨晩はいつも以上に雪が積もった。街を歩きながら雪を溶かすのは労力がかかりすぎると考えた私は、丘の上から一掃しようとしていた。いつものようにポケットに手を入れる。スッと手を広げるとたくさんの精霊たちが姿を現した。 だが、みんななぜか無表情で、どこか不機嫌そうに見えた。ここで魔法をやめておけば良かったものの、私はいつものように精霊たちに指示を出した。 すると精霊たちはどんどん数を増やして、今まで見てきた数十倍以上の数になって街に広がっていった。嫌な予感がした。 丘の上からあっという間に溶けていった雪は、国中の雪を溶かしきった。だが、それだけに留まらず、なんと家を、人を、燃やし始めたのだ。予想外のことが起こってしまい、私は必死に精霊たちを呼び戻した。 「お願い! もう仕事は終わったはずよ! 戻ってきて」  それでも、炎はごうごうと真っ黒な煙を空に立ちこめらせながら広がっていく。国民たちの叫び声がここまで届いた。 「お願い、もうやめて! 私、こんな命令していないでしょ!」 「また、命令ですか」  目の前に現れたのは、あの日見た白い顔の会話ができる精霊だった。初めて会ったときよりも激しく燃えていて、それは怒りの炎にも見えた。 「そうよ! 私は雪を溶かすように言っただけ。それだけなのに、なんでこんなことするの!」 「あなたは私たちを自己啓示欲のために利用している。炎の魔法が使えるようになって、国民から感謝されることも当たり前になって、自分の将来が確固たるものになって、安心しきっている。私たちにすべてを捧げると言ったあなたはもういない。自分の欲のためだけに動く人間に貸す力などないわ」  それだけ言い残して、精霊はいなくなった。その瞬間、街中の炎はさらに大きくなった。 「お願い! これから気をつけるから、もう自分の欲のために利用しないから。こんなことやめて……」  泣き崩れる私を無視して、街はどんどん燃えていく。どれだけ手を動かしても、精霊たちと通じ合っている感覚がなかった。ポケットの中に手を入れても、魔法が宿っている感覚もなかった。 「お姉様! 私が止めてみせますから、どうか泣かないでください。お姉様らしくありません」
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