炎の手

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 その後、お父様にこっぴどく叱られて、私から国民に直接謝罪の文書を出すこととなった。お父様は国民からの信頼がなくなることを恐れて、私の精霊が暴走したことを隠そうとしたが、私はありのままに話すと決めていた。  やはりというべきか、国中から非難が殺到した。だが、あの炎を消したのも第二王女であるイザベラなのだと発表されると、それもおさまった。  あれから時間をおいて、私は再び炎の精霊を呼び出そうとした。今回もイザベラが一緒だった。だが、前回同様に枯れ木を燃やして呼び出そうとしたが、なかなか現れなかった。 「やっぱり、一度期待を裏切ったのだから無理よ。私は諦めるわ。イザベラがこの国の後継者になってちょうだい」 「そんなことありません。きっと、変わろうとしているお姉様のことを炎の精霊は見ているはずです。待ちましょ……」  イザベラの魔法で炎を消してと頼もうとした瞬間、あの日のように炎が渦を巻いて立ち上がった。 「炎の精霊!」 「国民に真実を話した勇気は認めるわ。でも、まだあなたを信頼しているわけじゃない。少しだけよ。少しだけ力を貸してあげるから、妹と二人でこの国を救ってみせなさい」 「ありがとうございます! 私、期待に応えられるように頑張りますから。今度は裏切りません」  差し出した手に炎の精霊の手が重なる。あの日感じた力よりもずっと弱い力だったが、それでも再び私の手に魔法が宿った。イザベラと二人で国を救うようにと、使命を与えてくださった。これがどれだけありがたいことなのか、正直よくわからない。  それでも私は、二度と間違えない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加