炎の手

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 それからこの国は見違えるように、平和な国となった。新鮮な水が与えられるようになったことで疫病が減った。それぞれの家に宿った小さな炎の精霊が家を暖めてくれることから凍死する人がいなくなった。温かな食事も当たり前のものになりつつあった。  十四歳になった私は隣国の王子と婚姻を結んだ。隣国は、雪国であるこことは違って、常に乾燥した砂漠地帯が広がっていた。それは年々範囲が広くなっているようで困っているようだった。私の炎の魔法は役に立たなかったが、イザベラが善意で隣国にも雨を降らせてくれるようになった。そのおかげで草木が生えるようになり、農業が盛んになった。さらに、交易も増えて私の国も豊かとなっていった。  一度は国中を燃やす大事件を起こしてしまったが、あれから同じことは起こっていない。炎の精霊も私を信頼してくれて、目の届かないところでもお願いすれば仕事をしてくれるようになった。  そして今日も、私の炎の精霊が雪を溶かして、イザベラの水の精霊が雪解け水を綺麗にしていく。  魔法の力で国に平和をもたらした二人はその後、長い歴史の中でも偉人として語られるようになった。
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