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第17章
その日、私は突然ベッドから起き上がることが出来なくなった。アルバイトはあの事件以来行ってなかった。店長からは携帯に毎日のように留守電が入っていた。いつしかその電話が怖くなった。一方、由美子からの連絡は一切なくなった。今日は西洋美術論の講義があった。必修科目ではなかったし、毎回出欠を取っているわけでもなかったし、年度末にレポートを提出すれば単位が取れた科目だったので、無理をして行かなくても良いと判断した。すると気持ちが楽になった。大学に行かなくても良く、アルバイトも行かなくて良いと思うと心が軽くなった。
でも、そう思ったのは一瞬で、それではいけないと思い直した。母と兄が無理をして私の学費を捻出してくれている。アルバイトをして少しでも生活の足しにしなくてはいけない。一生懸命勉強をして良い会社に就職しなくてはいけない。そう思うと、一瞬安らいだ心が再び黒雲に覆われた。それで再びベッドから起き上がろうとしたのだが、倦怠感と頭痛とで、やっぱり起きることが出来なかった。風邪かしらと思った。だったら今日は無理をしないで、早く治して、それから頑張ればいいと思った。私はそう結論を出すと、掛け布団を深く被り、そのまま眠りに落ちた。
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