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名を呼ばれて、振り返った西門の表情がぱっと明るくなった。
「東雲〜!」
彼女たちの影になった東雲を目ざとく見つけたらしい。大きく手を振り、走り寄ってくる。女子高生達が一斉に東雲を振り返った。
よかった…。気が付いてくれて。でも、何だか…俺、周りから睨まれてる?
「あ、西門…あの…」
なんとなく不穏な気配が取り巻く。西門に歩み寄った東雲に周りの声は丸聞こえだ。
「誰? 男子やんな?」
「見ぃひん顔。ほんでもよー見たら美形ちゃう?」
「え〜ヒョロヒョロやん。やっぱオトコは筋肉やで」
「いや、カオやろ!」
「体力スキル低そ。スルーしとこ」
西門や栗栖狙いの女子たちが、東雲のような文系男子に興味がないのはもちろん理解できる。けれど、東雲の表情は当然険悪になった。もちろん空気もだ。
お前ら悪口は聞こえないように話せよな! ヒョロヒョロで悪かったな! 誰が、男子だよね? だよ!
むっとして周りの女子を振り返った東雲の気も知らず、西門は上機嫌だ。
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