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10列ほどはありそうな観客席は満杯だ。もっと小規模な試合を想像していた東雲はいろんな意味で面食らった。
「ずいぶん大きな練習試合なんだね。」
「ここらはスポーツが盛んやからな。こういう強豪校が集まる試合は結構、企画されんねんで」
隣に座った井藤が得意そうに目尻をちょっと上げて説明した。相変わらずキツネみたいだ。
中間試験も近いのに、練習試合の応援に駆け付けるクラスメート達。自分だって模試を捨ててこの席に座っている。
なんか、不思議だ。でも…面白いかな。
東雲は少々後ろめたいような、誇らしいような、妙な気分だった。
「あっちな…」
井藤が顎をしゃくって示した一階の隅。そこには大人たちの一団が並んだパイプ椅子にじんどっていた。
「ズラズラ~っておんの、大学の有名どころのコーチや監督やで」
「大学の?」
聞き返してから、それがスカウトの話だと東雲にもわかった。
「そや。西門もきっと目ェつけられてるでー」
推薦でバスケの強豪大学に進学か…。
西門には当然な気がした。
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