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親の転勤…っつーか、父さんの単身赴任先に派遣されたっつーか、浮気避けにされたっつーか…。
トイレ後に石鹸で手を洗う彼の後ろを、珍し気に何人もの生徒が眺めて行く。
『きっと楽しいわよ~。ほら、O阪って美味しいもの多いっていうじゃない?』
にっこり笑った少女のような笑顔が頭に浮かんだ。
母さんは心配症だからな~。弟は中学受験だし…。だからってせっかく受かった高校を一年で転校だなんて…。しかも…何か不安…。
チャイムが鳴る寸前に戻って来た東雲を、また西門が振り返った。
「大丈夫か? キンチョーしてんのか? 自分」
「…してないけど…」
もうほっといてくれないかな~。
ちょっと不機嫌そうにしてみたものの、もちろん西門には届かない。
「ほんならよかったわ。東京から来たってだけで気になんねんて、関西人は」
悪戯っ子の様に笑うと、西門は前を向いた。開始のチャイムが鳴ったからだ。
「何で東京から来たら気になるんだよ…」
おまけに東雲の視界は逆立った西門の髪が黒板を半分ぐらい塞いでいる。その時間もやっぱり振り返ろうとする西門に授業中の半分ぐらいは費やした。
「そろそろやで。東雲」
小声で西門の横顔が囁いた。
え? 何がそろそろ?
東雲には意味が分からなかったが、西門がじりじりと机をほんの少し前と横にずらし始めた。見渡すとそんな連中が結構居る。ガタガタと小さいけれど机の揺れる音が周りで起こる。皆、一様にドアの方へだ。
キンコーン。4時間目終了のチャイムが鳴り始める。と同時に西門を含め何人もの生徒がいきなり立ち上がった。ガタガタンと椅子の音が響く。
「行くで!」
うわっ! な、なんだ?!
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