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彼女が振り返った先に視線を投げると、数人の女子が東雲にシナを作るように身体をくねらせる。
何で俺が! そんなの冗談じゃない。これだからこういう女子は…。
そう思った途端、東雲は答えていた。
「絶対にヤダね。お断り」
「ちょっとお! 何やの、その言い方!」
ブロロオオオ。叫んだ彼女の声をかき消し、大きなバスの車体が二人の側をすり抜けていく。辺り一帯に排気ガスを撒き散らしながら。
うわ、危ないし臭いし! ここらへんのバスの運転、マジありえない!
ますます不機嫌になっていく東雲を置いて、彼女は動き出した列に慌てて戻っていった。
満員のバスは揺れ、しかもすぐそこに女子の一団がチラチラと彼を見ながら内緒話を繰り返している。
もしかして俺、ケンカ売られてる? 無視しとこ。
さっきまで皆と一緒だったせいか、妙に寂しい気がした。
こんな気分、あんまりなかったのにな…。
もうすぐ梅雨に入る時期だが、まだ晴天が続いている。夕焼けの光が窓から差し込む。どこへいくにも一人が基本だった。例外と言えば弟ぐらいだ。
お母さんも、令も…元気かな…。
ふと、懐かしい面影が脳裏に走る。
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