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ピンポン! ピンポン! ピンポン!
次の停車をリクエストするボタンの音が、彼の周りで何度も鳴った。誰かが押してくれたのだろう。
ありがたい! こんな公共の場でも…さすがO阪。人情の街とか言われるもんな!
周りの反応が嬉しくて彼は口の中で何度もお礼を口走った。
「次、止まんでー」
一番後ろの席の誰かが、バスの中から西門に手を振った。通じたのか、手を振り返した西門が、ブレーキを踏んだ車体にぶつかりそうになる。
危ない!
「アブなー!」
窓を覗き込んだ学生が口走る。またバスがスピードを上げると西門の全力疾走が始まった。
「すみません、あの…」
東雲は満員の揺れるバスの中を、人を掻き分けて前に進んだ。
早く、早く。早くバス停に着いてくれ!
途方もなく長い時間に思えたが、きっとほんの数分だ。次の停留所にようやくバスが止まる。折り畳み式のガラスドアがプシューと気の抜けた音を立てて開く。周りの視線が痛いほど突き刺さる。東雲は運転手に一礼してステップに足を掛けた。
「イテ!」
その足をギュッと踏みつけて、彼をドンと突き飛ばすようにして女子生徒たちがステップを駆け下りた。
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