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「東雲ー。ライン、見てくれへんかったんかー? 一緒に帰ろなって、ずっと送ってたんやでー」
「え? あ、そう…だったんだ」
慌てて尻ポケットからスマホを取り出す。そこにはあんまり可愛くない猫のスタンプで、帰るで、どこや、おーいなどの文字が並んでいる。大勢の中にいたせいか、音に全く気が付かなかった。
「ごめん。…何も言わずに帰っちゃって…」
「そんなんええって。ほんでも、間に合うてよかったわ」
そんな風に嬉しそうに笑われると…。
東雲はちょっと動きを止めて西門と夕日を眺めた。
なんだろ、これ。なんか、胸の辺りがジンってするよ。ほら、さっき、ちょっと寂しかったら…。あの西門ファンの女子たちには、ザマミロ! と全力で思ったけどさ。
「ほな、さっさと帰ろかー。後ろ、乗りや」
「え? 後ろって…。」
自転車の後ろには、細い荷台があるだけだ。とても人が座れるようなモノではない。
「ここ?」
「立ち乗りやがな。輪っかの真ん中の棒に足乗せてみ。でけへんの?」
え? どうやって…。棒ってこの車輪から突き出た10センチくらいのヤツ? いや、それ以前にこれって交通違反とか…ではないのなか。
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