23人が本棚に入れています
本棚に追加
この場面でできないとは言いたくない。でなければ、5駅を歩いて帰るか、最悪またバスに逆戻りだ。
「…やってみる。」
やったことないけど。
おっかなびっくり、後ろのタイヤから気持ち出っ張っている棒に片足をかける。西門が両足で踏ん張って自転車を支えているせいか、比較的安定している。
「ちゃーんと、わいの肩、ガッチリしっかり持ちや。両方な」
「う、うん」
西門の肩、厚いなー。ついでに熱い。振り返ってニコニコ笑う、笑顔そのままだ。
その肩を両手でつかみ、東雲は思い切って地面を蹴った。危ういバランスで慌てて荷台の向こうへ片足を置く。
うわわわ…。落ちる! 倒れるー!
「ちょっと…ゴメン」
一瞬、ほとんどしがみつからんばかりになったものの、何とか立ち乗りの恰好にはなった。
うわ! 高っか! 道行く人の頭が下に見えるじゃん。
巨人にでもなったような気がした。
「ほな、いくでー。しっかりばっちり捕まっときやー」
いかにも嬉しそうな弾んだ声。西門がぐん、と自転車を漕いだ。
最初のコメントを投稿しよう!