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「うわわ…」
最初こそ揺れたものの、スピードに乗り始めると自転車は安定してきた。東雲はずっと足元を見ていた顔をようやく上げた。
「うわあ…。」
二人の間に涼しさを残して、風が駆け去っていく。遠くまで見渡せる夕日に染まった街並み。いつもとは違う景色は新鮮で、そして鮮やかだった。風が彼らを別の世界に運んだようだ。
「すっごい! 気持ちいい!」
風が全身を撫で、すっと体温が下がったような心地よさ。思わずそう口走ると、西門も声を上げた。
風が全身を撫ですっと体温が下がったような心地よさ。思わずそう口走ると、西門も声を上げた。
「そやろー! 行くでーーー!!」
ちょうど坂だ。勢いに乗った二人の自転車は飛ぶように駆けだした。
「おおおーーー!」
西門が雄たけびをあげて笑った。東雲も笑った。
西門と一緒だからかな。初めてだ、こんなの。
胸がドキドキと波打った。自然と口元がほころんでいた。
店の立て並ぶ辺りに自転車が差し掛かると、西門はスピードを落とした。
「なんや、ええ匂いすんな~」
きょろきょろと辺りを見回しながら西門が呟いた。
「確かに」
油と醤油の香ばしい匂いが漂ってくる。
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