27人が本棚に入れています
本棚に追加
第8話 味オンチ's転校生inO阪CM旨いモン
「おーい! 東雲、来てるかー!」
教室に飛び込んできた西門がそう叫んだ。制服のネクタイを引っ掛けたままだ。朝練が終わってすぐ。
「知らんな~。来とんか~?」
「けど、カバンあんで」
「さっき、トイレ辺りでおったなー」
誰彼ともなく声が上がる。
「よっしゃ! トイレやな!」
西門は身を翻して駆けだした。全身が浮足立って跳ねんばかりの勢いだ。飛ぶように大きなガタイが廊下を駆け抜けていく。
あーもう、東雲の奴、どこにおんねん。こんな大事な時に~! おった!
トイレ前で誰かと話している後ろ姿を見間違えるわけがない。
「お~い! 東雲~っ。ちょいゴメン」
細い身体と茶色がかかった長めの髪。少し驚いたように振り返った相手の腕を浚う。西門はその勢いのまま階段の踊り場まで走った。
「ちょっと…ちょ! 西門!」
いきなり一緒に走る羽目になった東雲は目を白黒させている。その様が何だか可愛らしくて西門は笑った。
「驚かしてゴメンやで。でもな、あのな、実はもっと驚くことがあんねん!」
最初のコメントを投稿しよう!