29人が本棚に入れています
本棚に追加
うわ~っ! と歓声が上がった。皆が口々にわいわい言いながら、いっせいに西門の母親に向かって走って行く。その声が、模試が終わって体育館に向かっていた東雲の耳にも届いていた。
バスケ部の連中が体育館の隅のベンチに集まった。どん、と重そうな保冷バックを床に置いて、西門母が胸を張った。
「圭、リクエスト、持ってきたで」
「おお~、オカン、ありがとうさん!」
「お! 東雲ー! こっちこっち!」
宇野が大きく手を振って、体育館を覗いた東雲を呼んだ。
お、東雲も来たんやな! 間に合合うてよかったわ! はよう来~や!
西門も手を振って、東雲に来るように合図した。その間も、皆がわっと白い保冷バッグに群がっている。
東雲は小走りに駆け寄ってくると、西門母に横から声をかけた。
「あ、あの、この間はありがとうございま…」
そんな東雲の言葉を遮って、西門の大きな手が保冷バックの中をごそごそとかき回した。
「そんなんより、東雲、何にする? ミルクか? チョコか?」
「アズキもイケんでー」
最初のコメントを投稿しよう!