第9話 定価買い's転校生㏌O阪お買い物

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 東雲はちょっと動きを止めた。冷蔵庫の値段は定価と割引率、更にデカデカと販売価格が黄色と黒で書かれ貼られている。  なのに、ど〜いうこと?  仁王立ちした西門母の前で小太りの店員が腰の辺りから素早く取り出したのは大きな電卓だ。しばらく店員は値段を見て電卓を忙しく叩いていた。  何なんだ、この沈黙は…。 「ちょい、待っててな」  西門が東雲に耳打ちし母親の方へ向かった。 「これくらいでどうでしょ」  店員が腰を屈めて電卓を指し示す。西門母は周りに聞こえるほど大きく溜息をついた。 「話にならんな! 圭、帰んで」 「あいよ」  同じタイミングで踵を返した二人に定員が叫ぶ。 「ち、ちょっと待って下さい!」  店員はまた電卓を指で叩く。すごいスピードだ。 「これで、どうです?」  西門母が電卓を覗き込み、きっぱり言った。 「帰るで」  二人してまた踵を返す。 「ちょっと待って下さいって!」  店員が取りすがる。丸い顔には汗が浮いている。
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