31人が本棚に入れています
本棚に追加
大きな観葉植物やそれにぶら下がった黒黄の阪神グッズ。首に布を巻いて座った大柄な中年の客と笑っている女の子は店員だろうか。そこにヒョウ柄母さんが入っていくとさらに盛り上がったのか、ひとしきり笑いあっているのが見える。
「西門のお母さんは、美容師さんなんだね」
「いや、パーマ屋やねん。ああ見えて一馬力やのに結構稼ぐねんで。なあなあ、あの看板の電球な、クリスマスみたいにキラキラな色つけた方がいいと思えへん?」
西門は車の中で窮屈そうに身を屈めながら上を指さした。
え? 一馬力って…。
東雲は西門の言葉の後半をさりげなく聞き流した。
「あの…西門のお父さんは…?」
あ、これ聞いていいのかな。
とっさに口を閉じた東雲に相手はあっけらかんと答えた。
「知らんねん」
へ? 知らん? それって…。
「わいが小学生の時な、パチンコ行く言うてでかけてまんま、まだ帰ってけーへんねん」
「…まだ…?」
最初のコメントを投稿しよう!