第9話 定価買い's転校生㏌O阪お買い物

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「父さん。早かったんだね。出張、早く終わったの?」  ちょうど帰ったばかりなのだろう。父親がネクタイを外しながら彼を出迎えてくれた。東雲の知る父親はいつもきちんと背広を着込んだ商社マンだ。急きょ借りた家族用のマンションは広く、少し薄暗い印象だ。二人きりだからかもしれない。 「ああ、そうなんだ。思いがけずね。ところで、今日は遅かったようだけど何かあったのかい?」  遅い? あ、9時半だ。でも、塾に行ってた時は11時とかも普通だったけど…。確かに母さんが車で送ってくれてたけどね。  廊下を抜け、リビングに入る。4人掛けのソファーに鞄を置いて彼は父親に説明した。 「あ、友達のお母さんが食事に連れて行ってくれたんだ。王〇ってトコ。餃子とかチャーハンとか美味しくて…なんか、楽しかった」 「へえ、そうなんだ」  顔を綻ばせた東雲に父親は意外そうな表情を見せた。  そういえば…こんなこと話すの初めてだったかな。何だか照れる。…変なの。 「それはよかったね。お礼の電話をしておこうか」
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