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「あれ、ほんま、メチャメチャお得なんや! わいも、自分、探してんけど見つからんかってん。ゴメンやで」
「……」
本当は探す気力がなかったんだよな…。
なんとなく後ろめたいような変な気分で東雲は俯いた。
昼からの授業。東雲の視界はすっきり広かった。
よく寝てるなあ…。気持ちよさそう…。突っ伏した背中が規則正しく動いている。
また怒られるんじゃないのかな…。東雲は少々ハラハラしながらその背を眺めた。
あっという間に授業は終わり、放課後になった。
「お疲れさん。明日からもヨロ」
帰り支度を始めた頃、すっきり目覚めたらしい西門が右手を差し出した。
「東雲は部活してたん? わいはバスケ部。スポ推やねん。特にこのクラスは3分の1くらい、せやで」
「スポ推?」
「スポーツ推薦やがな」
そうなんだ…。それで、数学の問題が解けただけで、感心するような雰囲気だったんだな。
「そやから、わい、メッチャ、アホやねん。また勉強教えてな」
屈託のない笑顔。
子どもみたいだ。なんか、妙に眩しいような…。
「え? あ…うん」
見透かされた? そんなつもりじゃ…。
握った西門の手が熱い。
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