第10話 心配性's転校生in噂's D組

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 ドアの敷居を大股に越えて西門が教室に戻ってきた。そろそろ昼休みが終わる頃だ。まっすぐに東雲のところにやってくるとその辺の席の椅子を勝手に引き寄せて座り込む。阿部がよう、と手を上げた。 「どこ行っとったん?」 「なんや、珍しく来とった理事長が、激励とかなんかで会いに行っとったんや」 「なんかくれたんか?」  事務手続きは英語の教員や顧問たちがバックアップしているらしい。うまくいけば学校の宣伝になるという期待の表れなのだろう。 「何も。頑張ってな~って」  理事長…。どんな人なんだろう。  全校集会などで会うのは、小太りの狸のような人の良さそうな校長だ。東雲が転校して数か月だが、まだ一度も理事長の姿を目にしたことはなかった。 「しょーもな~」 「そりゃまたケチくさいな~」 「食いモンでもくれたらエエのに」 「O阪名物とか? アメリカやったら何が受けるかわからんもんな~」  ホンマやな~と大笑いする。いつの間にか周りに他の生徒も集まってワイワイ騒ぎ始めた。
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