第10話 心配性's転校生in噂's D組

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  どうしたんだろう。深刻そうな顔だな。井藤のこんな顔、初めて見た。  目尻の上がった目はいつもは機嫌よく笑っている。なのに、真顔だとキツく見えた。東雲は何か不吉なものを感じながら頷いた。 「何? 何か用?」  廊下の隅で問うた彼に、井藤は声を落とした。 「なあ、西門()の事故のこと、聞いてるか?」 「え?」  事故? 何のこと?  その単語ひとつで、さあっと彼の血の気が引いていく。 「西門のオカンの店にトラックが突っ込んだんや」 「ええっ!!」 「ニュース見てへん? あかんわ〜。誰も東雲のライ〇も電話番号も聞いてへんかったもんな。いっつも西門がしとったから」 「そ、そんな大きな事故なのか?!」  あのチカチカした電飾の店…。お客さんもヒョウ柄母さんもあんなに楽しそうに笑ってたのに…。  血相を変えた東雲の頭に浮かんだ風景。それがガラガラと崩れていく。 「…店グチャグチャやで。オカンも怪我したらしい」 「西門は? 西門は…どうして…?」
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