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頭を下げたり泣いてみせたり拝んでみたりの忙しい西門に東雲が口を挟む隙はなかった。その間にワラワラと人が集まる。
「お~! 西門! 大丈夫なんか?!」
「まーな、皆で何とかせなな~。やっぱオカンは偉大やで」
「西門トコは特別チョー偉大や」
「ホンマホンマ」
わーははは、といつの間にか集まっている連中でバンバン肩を叩きながら大笑いする。
何がホンマなんだよ、それより…バスケ留学は…。
そう言いかけて、背の高い連中の笑い声とチャイムとに邪魔をされた。
「西門、また後で…」
「おう! 後でな~」
けれど、しばらく欠席していた西門は職員室に呼び出されたり慌ただしかった。結局、東雲が西門と落ち着いて会えたのは、いつものようにバスケット部の練習の済んだ帰り道だった。
「西門!」
葉の茂る大きな銀杏。夏至が近いせいか、まだうっすらと明るい。空色から紺へ空は変わって行くところだ。大きなリュックの中身をカラカラと音をさせて、西門が走ってきた。
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