31人が本棚に入れています
本棚に追加
別に嘘つかなくったって…。
咄嗟に、東雲はそう呟いた。
「まー。いっこも言うたらホンマちゃうけどな。めちゃくちゃショック! ってのでもないで」
それがあんまりいつもと同じ声で、東雲は思わず相手を見上げた。
あれ? 何で? 何でそんないつもどおり…機嫌よさそうで…。
目を細め笑った口元から覗く八重歯。どこかいたずらっ子のようだ。
「ほなってな、わいがNBAに行くんは決まっとるんや。それが今回と違たっちゅ~だけの話や。心配せんでも次があるがな。なんせ、決まっとるコトなんやから」
「……」
西門は不意に走り出すと、ダンと地を蹴って飛び上がった。淡い街灯が道路の遥か遠くまで一気にその長い影を描く。高い枝の先で、ポプラの緑の葉がハイタッチをするように西門の手を受け止めてバシッと音を立てた。
「…決まってるって…。誰が…」
「わいが決めたんやから、それで決まりや!」
スタッと着地して西門が振り返った。差し出した拳に親指を立ち上げて、ニッと笑う。
「……」
最初のコメントを投稿しよう!