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「…な~、見てみ~」
「え?」
東雲は意味が分からず隣の西門を見上げた。西門も同じように空を見上げていた。いつの間にか、すっかり暮れた夏の空に淡い星が浮かんでいる。
「星がいっぱいやで」
「え? あ?」
2人は並んで空を見上げていた。高いポプラの葉が揺れる。その遥か彼方。
「よう光る星があんなあ」
「白鳥座のスピカだね。…春から夏の星座だよ」
「そっか~。東雲は何でもよう知っとるな~」
「…そんなことは…」
晴れ渡った空が遠い。手が届かないほど、遠くなってしまった西門のチャンス。
「…でも、やっぱり俺は悔しいよ…」
思わず本音が東雲の口から零れ落ちた。と、同時に下を向いた西門もまた、思ったことを口にした。
「東雲の頬っぺた、八百屋のいっちゃん高いトコに並んでる上等な桃みたいやな! スベスベやん!」
「え?」
「お?」
あはは、と西門の笑い声と、なんだよそれ~! と東雲のブーイングがまた同時に響いた。西門はスキップしながら夜道を駆け出した。
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