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あ! 西門だ。
小さく飛び上がった西門が、東雲に向かって一直線で走って来る。
「え? あ、あの…」
うわ。どうしよ。ちょっと見てただけなのに~。逃げたい…。何やってんだ、俺。 ただ眺めていただけで何の意図もない。仕方なく、東雲は手を振った。果てしなくぎこちない仕草だ。
「体育館、よ~わかったな~」
なんで満面の笑み、浮かべてんの?
不思議と東雲はそんなことを思った。白い歯と汗がキラキラ光って見えたのだ。
「明日、ちゃんと学校の中、案内したるからな」
また、見透かされた? いや、そんなつもりじゃないって…。
「ほな、気~つけて帰りや」
「あ、うん…」
案外、あっさりと手を振って離れていく。またホイッスルが鳴った。東雲は、ほっとしたような肩すかしを食らったような妙な気分だった。
次の朝、東雲が教室に入ると、すでに西門は席に座っていた。
「…おはよう。早いんだね」
できたての友人にかける東雲の声はぎこちない。ほんの少しの緊張。
「はよ。わいは朝練あるから、わりと早いで。今日は、学校バンバン案内したるからな。昨日みたいにはぐれたらあかんで」
西門がニコリと笑うと八重歯が覗いた。
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