31人が本棚に入れています
本棚に追加
梅雨の晴れ間の陽射しが底抜けに明るく、よく眠れなかった目に眩しい。
「おーい、東雲」
階段に向かうと、上で井藤が手招きしていた。
「ちょ、昼休みな、体育館の裏に来てや。誰にも内緒やで」
声を潜め、東雲の肩を軽く叩く。
なんだ、それ。わざわざ? それにしてもいつもの井藤じゃないな…。
普段はちょっとへらっとしているのに、今はキュッと口元を結んでいる。
「何の話?」
「ちょっと長なるから昼休みな。たのむで」
どやどやと教室から出てきた生徒たちの一団にドンと押されて、2人はよろけた。
「おう、おはよ~。井藤っちゃん、東雲。ドアの前で立ち話すんなよな~」
「悪い悪い。けど、当たってから言うなや」
井藤もワイワイ言いながら、そこに紛れて東雲から離れていった。
も~、なんでこう、体当たりしてくんのかな。関西人は。
どうも接触が多いような気がする。東雲はカバンを持ち直して教室へ入った。その日、西門は登校しなかった。事故にあった母親のことで、やはり何かと忙しいらしい。
最初のコメントを投稿しよう!