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昼休み、数人の生徒が東雲に声をかけてきた。
「な~、東雲、この脱出ゲームしたことある? ヒント分かれへん?」
「次の物理の宿題、こんで合うてる?」
俺は攻略サイトでも正解集でもないっての。しょうがないな~も~。
そう思うものの、ここへきてから結構面倒見のよくなった東雲は一応、いつも目を通してみる。
「悪いけど、今日はちょっと用があるから…」
「ほな、後で見てや~」
騒がしい教室を抜け出して体育館へ向かう。北側の裏は自転車置き場が並ぶ。その向こうの大きな木の下に人影が見えた。
「おー東雲! こっちこっち」
大きく手を振ったのは阿部だった。さっき教室で会ったばかりのニキビ面だ。
「遅かったやん。来ーへんかと思たで」
と、不満そうに口を尖らせたキツネ目の井藤。
なんだ? なんで、こんなトコで? いつも教室でバカ話しているのに。
自転車置き場と歩道との境に、コンクリートの低い杭が並び太い鎖が繋がれている。最後は大きな木の側で止まる。その影に集まった3人。
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