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「ほな、ラ〇ン交換は後でな。絶対、絶~対、西門に悟られたらアカンで」
初夏の日差しが暑い校庭を突っ切って、3人は教室へ向かった。
「けど、東雲は分かってくれると思とったで」
「え?」
軽く走りながら、井藤の目が細くなった。
「ほなって、初めてココへ来た時と、全然顔つき違うもんなあ、今」
「つまらんなーって顔しとったわ。ツーンとしてな」
わはは、と薄青い空に響く笑い声。
うわ。まだ言うか、それ。
「けど、最近は違ゃうもんな。西門とおると楽しそうやし」
「……そうかな…」
やっぱ、みんなよく見てるな…。そうだよな…。
少々恥ずかしくて、東雲は自分の足元を見て走った。だが徐々に2人の足が遠くなる。
「はよ来いや~。東雲~。置いてくで~」
「先、行ってくれ…」
スポーツ推薦の連中と一緒に走って遅れない筈がない。
でも俺…。何ができるんだろう。そういえば父さんも同じようなコト言ってたな。俺らしい応援って。俺らしく点稼ぎ…。得意と言えば勉強だけど…。なにかにならないかな…。
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