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栗栖ってこういうトコはあっさりしていてありがたい。こ~いうO阪人もいるんだな。
「お~。誰や。…東雲!?」
やってきた仙頭は彼の姿を見た途端、ぎょっと顔色を変えた。二人が会うのは仙頭がD組に乗り込んできた時以来だ。あの時は東雲の数学の点数が満点だったから勝負にならずに終わった。細長い顔の上半分を豊かな髪が覆っている。東雲はその奥の見えづらい目を覗き込むように下から見上げた。
「仙頭くん、ちょっと話があるんだけど、付き合ってくれないかな」
できるだけ丁寧な口調で告げて東雲は少々ぎこちない笑顔を浮かべた。
「…なんやて…?」
斜めに彼を見る前髪の奥の目はちょっと引き気味だ。
すっごく警戒されてるな、俺。…しかし、分かりやすい奴ではあるな…。
廊下の端の窓ぎわまでついて来た仙頭が居心地悪そうに口走った。
「なんやねん。俺、塾があるんやけど。ちゃっちゃと言いや」
ちゃっちゃって何だろう。まあいいや、そんなことどうでも。
「君を見込んで、頼みがあるんだ」
「へ?」
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