32人が本棚に入れています
本棚に追加
体育館から一直線で走ってくる西門の姿が汗で霞んで見えた。
西門、速! ここまで秒かよ!
「何してんねん、東雲」
不思議そうな顔。
そりゃそーだよね。気になるよな。運動オンチの俺がこんなことしてたら。そういや、西門に引っ張られて体育館まで走ったっけ。あれは転校したての頃だ。ホント、西門は足が速くて力が強いよな…。
ぼんやりと考える東雲はすでに酸欠かもしれない。足を止め、前かがみにゼーゼーと息を繰り返す。
「いや、ちょっと体力を…つけようと…思ってさ…」
息も絶え絶えになりながらもそう返答する。
「…ほりゃまあ、ええこっちゃ。けど、ちゃんと水分補給してるか? わいも一緒に走ったろか?」
西門に渡された飲みかけのポ〇リスエットがすごく嬉しい。一口、飲むと喉と胸の温度がスッと下がった。
なんだか美味しい…。〇カリって関西と関東じゃ、使ってる水が違うんだっけ…。味も違うのかな。
少し息の落ち着いてきた東雲はずり落ちそうな眼鏡を掛け直した。そして、ようやく西門をまっすぐに見上げた。
「ありがとう。でも、西門じゃ、早すぎるよ」
「お~い! 東雲~。行くで~」
最初のコメントを投稿しよう!