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かなり遠くから仙頭が振り返って叫んだ。
お、仙頭、ナイスタイミング。ここはさり気なくかわそう。
「じゃ、西門。また後で」
東雲がペットボトルを返すと、西門は受け取った手を大きく振った。
「おう! 一緒に帰ろな!」
うん、とにかく頑張ろう。西門のためだ。
その決意を新たに、東雲はまたヨロヨロと走り出した。グラウンドの方からはいろんな声が飛び交っている。校舎の下の広場では、音楽をかけて踊っている連中もいる。
このガッコ、文武両道って方針だったっけ…。どの部も元気だよな…。踊ってんの、何の部なんだろ…。ヒップポップとかなのかな…。
息の苦しさを紛らわせるために、東雲は辺りを見回しいろんな物に目をやりながら走っていた。
「危ない!」
どこか遠くで人の声がした。目に飛び込んできたのはすごい勢いで走り寄ってくる阿部の姿。
「ん? 阿部? って…うわ!」
そのままの勢いで、どん、と突き飛ばされて、東雲は後ろに倒れ込んだ。空が高くに見えた。その上の方をサッカーボールが横切っていく。
「おっと!」
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