第14話 運動オンチ's転校生inスポ根グラウンド

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 野太い声が耳元で響くと同時に、東雲の背はどさり、と何かに当たった。  うわあ、びっくりした! な、何だ、いったい…。  驚いて首を捻ると、誰かが東雲の背を支えてくれていた。おかげで倒れずに済んだ。キャッチャーの格好をした生徒だ。 「イケるか~?」 「危ないやんか! 東雲! ここいらはボールが飛ぶんやで!」  屈み込んでいた阿部は頭を上げると、血相を変えて東雲に怒鳴った。 「おーい! いけるかー! 東雲ー!」  向うから走ってくるのはサッカーのユニフォームを着た井藤だ。 「え?…ここ…?」  東雲は阿部に手を借りて起き上がりながら辺りを見回した。  うわ、グラウンドど真ん中じゃないか!   ぼーっと走っていたら、いつの間にか野球部とサッカー部の練習の間に入り込んでしまっていたらしい。 「…ごめん、ごめん。…気が付かなくて…。ありがとう。…練習の邪魔してごめん」  東雲は慌てて校舎の方へ向かって走り出した。 「気ィつけてな~!」  阿部とキャッチャーの生徒はその場で手を振った。
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